01-01-007 建設工事における現場施工体制について

 建設工事における現場施工体制については、建設業法(昭和24年法律第100号。以下「法」という。)において規定されているほか、平成13年4月から施行された公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号。以下「入札契約適正化法」という。)においても、施工体制の適正化、不正行為の排除の徹底を基本原則の中に位置づけ、一括下請負の全面的禁止、受注者の現場施工体制の報告、発注者による現場の点検等が規定されました。

 これらの法令等に基づく適正な施工体制の確保等を図るため、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、施工体制台帳を整備すること等により、的確に建設工事の施工体制を把握するようお願いいたします。

1 一括下請負の禁止等

 「建設工事における下請負について」でも述べているとおり、一括下請負は、中間において不合理な利潤が取られ、これがひいては建設工事の質の低下、受注者の労働条件の悪化を招くおそれがあること、実際の建設工事施工上の責任の所在を不明確にすること、発注者の信頼に反するものであること等種々の弊害を有するので、特に公共工事について建設業法等において全面的に禁止されています。
 また、一括下請負に該当しない場合であっても、不必要な重層下請は、一括下請負と同様に種々の弊害を有するので行わないでください。

2 技術者の適正な配置について

(1)  工程管理、品質管理、安全管理等がもれなく行われるように、適切な資格、技術力等を有する技術者等を適正に配置してください。
 特に、指定建設業監理技術者資格者証に係る建設業法の規定は遵守してください。

(2)  建設業者が工事現場ごとに設置しなければならない専任の主任技術者及び監理技術者については、常時継続的に当該建設現場において専らその職務に従事する者で、その建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係である者でなければなりません。

(3)  人材派遣業者からの派遣職員は、建設工事の現場作業に従事することができませんので注意してください。

(参考)建設業法における現場技術者制度の概要
許可を受けている業種 指定建設業(7業種)
土木一式、建築一式、管、鋼構造物、
舗装、電気、造園
その他(左以外の22業種)
元請工事における
下請金額合計
4,000万円以上
(建築一式の場合は、
6,000万円以上)
4,000万円未満
(建築一式の場合は、
6,000万円未満)
4,000万円以上 4,000万円未満
現場に置くべき技術者 監理技術者 主任技術者 監理技術者 主任技術者
技術者の資格要件 一級国家資格者
国土交通大臣特別認定者
一級国家資格者
二級国家資格者
実務経験者
一級国家資格者
実務経験者
一級国家資格者
二級国家資格者
実務経験者
 工事を請け負った企業と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者
 ただし、営業譲渡又は会社分割により建設業を譲り受け又は承継した企業は、3年間に限り、それぞれ譲渡又は分割を行った企業からの出向者を現場技術者とすることが可能
技術者の現場専任  公共性のある工作物に関する建設工事(国又は地方公共団体が発注する工事はすべて該当します。)で、請負金額が3,500万円以上(建築一式の場合は7,000万円以上)となる工事
資格者証の必要性 発注者が国又は地方公共団体等のときは必要 必要なし 発注者が国又は地方公共団体等のときは必要 必要なし

3 施工体制台帳の整備等について

 建設工事は、各種専門工事の総合的組み合わせにより多様化しかつ重層下請構造で施工されています。
 このような特色を有する建設業において、建設工事の適正な施工を確保するためには、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者が、下請、孫請など当該工事に関わるすべての建設業を営む者を監督しつつ工事全体の施工を管理することが必要です。
 このため建設業法では、下請契約を締結して施工しようとする建設業者に対し、施工体制台帳、施工体系図の作成を義務付けています。
 建設業者は、施工体制台帳の作成等を通じ施工体制の的確な把握を行うことによって、建設工事の適正な施工に努め、必要に応じ下請負人に対する適切な指導等に努めなければなりません。

(1)  施工体制台帳の作成等

 建設業者が、発注者から請け負った建設工事について、下請に出すときは、下請、孫請などその建設工事に関わるすべての下請負人の商号又は名称、それぞれの工事の内容、工期などを記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければなりません(法第24条の7第1項)。
 そして、入札契約適正化法第13条第1項の規定に基づき、平成13年4月1日以降に契約締結された公共工事については、建設業者は、発注者に対してその写しを提出することが義務づけられました。

(2)  施工体制台帳の拡充

 施工体制台帳は、所定の記載事項と添付書類から成り立っています。
 添付書類について、従来は2次下請以下の契約については、請負代金の額について明記する必要はありませんでしたが、建設業法施行規則の一部を改正する省令(平成13年3月30日国土交通省令第76号)に基づき、平成13年10月1日以降に契約締結される公共工事については、すべての下請負契約について請負代金の額を明記することとされました。

(3)  下請負人に対する通知等

 特定建設業者は、遅滞なく、その請け負った建設工事を請け負わせた下請負人に対して、

ア) 建設業者の商号又は名称

イ) 再下請負をさせる場合には再下請負通知をしなくてはならない旨

ウ) 再下請負通知及びその添付書類を提出すべき場所
を書面により通知し、かつ、ア)~ウ)について記載した書面を工事現場の見やすいところに掲示しなければなりません(法施行規則第14条の3)。

(4)  再下請負通知

 施工体制台帳が作成される建設工事の下請負をすることとなった下請負人が、さらにその工事を下請負させるときは(当該下請負人を「再下請負通知人」という。)、再下請負させる工事の内容、工期などを建設業者に通知するとともに、再下請負する建設業を営む者に対して、建設業者の名称、再下請負通知をしなければならない旨及び再下請負通知の提出先を通知しなければなりません(法施行規則第14条の4)。

(5)  施工体制台帳作成の流れ

ア)  公共工事の発注者と特定建設業者との請負契約締結

イ)  元請負人である特定建設業者が、一次下請負契約を締結することとなったときは、遅滞なく、一次下請負人に対し「下請負人に対する通知」を行うとともに、工事現場の見やすい場所に「下請負人に対する通知事項」が記載された書面を掲示し、施工体制台帳を整備する。

ウ)  二次下請負契約が締結された場合には、一次下請負人は、建設業者に対し再下請負通知書を提出するとともに、二次下請負人に対し「下請負人に対する通知」を行う。
 建設業者は、一次下請負人から提出された再下請負通知書により、又は自ら把握した施工に携わる下請負人に関する情報に基づき施工体制台帳を整備する。

エ)  三次下請負契約が締結された場合には、二次下請負人は、建設業者に対し再下請負通知書を提出するとともに(注文者(この場合は一次下請負人をいう。)を経由して提出することも可)、三次下請負人に対し「下請負人に対する通知」を行う。
 建設業者は、二次下請負人から提出された再下請負通知書により、又は自ら把握した施工に携わる下請負人に関する情報に基づき施工体制台帳を整備する。

(6)  施工体系図

 建設業者は、施工体制台帳や下請負業者からの再下請負通知をもとに、各下請負の施工の分担関係を表示した施工体系図(建設業者の名称、工事の内容、工期、監理技術者(主任技術者)の氏名(専門技術者を置く場合はその者の氏名)、その者が管理をつかさどる工事の内容)を作り、工事現場の工事関係者の見やすい場所及び公衆の見やすい場所に掲示しておかなければなりません(法第24条の7第4項、入札契約適正化法第13条第3項)。
 施工体系図は、次の点に留意して作成する必要がある。

ア)  施工体系図には、現に請け負った建設工事を施工している下請負人に限り表示すれば足りる(請負契約で定められた工期を基準)。

イ)  施工体系図は、遅くとも上記①により下請負人を表示しなければならなくなったときまでに行う必要がある。また、工期の進行により表示すべき下請負人に変更があったときには、速やかに変更して表示しておかなければならない。

ウ)  施工体系図に表示すべき「建設工事の内容」は、その記載から具体的な内容が理解されるような工種の名称等を記載する。

エ)  施工体系図は、その表示が複雑になり見ずらくならない限り、労働安全等他の目的で作成される図面を兼ねるものとして作成してもよい。

(7)  施工体制台帳等の備え置き等

 施工体制台帳の備え置き及び施工体系図の掲示は、発注者から請け負った建設工事の目的物を引き渡すまで行わなければなりません。ただし、請負契約に基づく債権債務が消滅した場合には、当該債権債務が消滅するまで行えばよいことになっています。なお、施工体制台帳に記載された一定の事項については、工事完成後、元請負業者の担当営業所において5年間保存されることになっています。

(8)  標識の掲示(法第40条)

 建設業者は、その店舗及び工事現場ごとに「建設業の許可標」を公衆の見やすい場所に掲げなければなりません。

(9)  下請負人に対する特定建設業者の指導等(法第24条の6)

 大規模な建設工事の施工にあたっては、多数の下請負人が参加し、さらに孫請以下の二次、三次の下請負が行われることも多く、これらの下請負人が共同して工事を施工しますが、従来必ずしもこれらの下請負人は建設工事の施工に関し必要とされる建設業法や建築基準法、労働基準法等の規定について理解が十分ではないため、現場における事故災害等のほか、労働者に対する賃金不払い等種々の問題を生じることがありました。
 そこで、このような問題を解決するため、以下の義務を課しています。

ア)  特定建設業者の下請負人への指導
 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者には、下請負人(当該特定建設業者と直接の契約関係にある者に限らず、当該建設工事に従事するすべての下請負人をいう。)に対し、建設工事の施工に密接な関連を有するもので、下請負人の保護、建設工事の施工に伴う災害の防止、労働者の保護及び安全の確保等についての法令で必要最小限の規定に違反しないよう指導すべき義務を課しています。

指導すべき法令の規定
法令の規定 内容
建設業法  下請負人の保護に関する規定、技術者の設置に関する規定等本法のすべての規定が対象とされているが、特に次の項目に注意してください。
 ア)建設業の許可(第3条)
 イ)一括下請負の禁止(第22条)
 ウ)下請代金の支払い(第24条の3・5)
 エ)検査及び確認(第24条の4)
 オ)主任技術者の設置等(第26条、第26条の2)
建築基準法  ア)違反建築の施工停止命令等(第9条第1項及び第10項)
 イ)危害防止の技術基準等(第90条)
宅地造成等規制法  ア)設計者の資格等(第9条)
 イ)宅地造成工事の防災措置等(第13条第2項、第3項及び第5項)
労働基準法  ア)強制労働等の禁止(第5条)
 イ)中間搾取の排除(第6条)
 ウ)賃金の支払方法(第24条)
 エ)労働者の最低年齢(第56条)
 オ)年少者、女性の坑内労働の禁止(第63条、第64条の4)
 カ)安全衛生措置命令(第96条の2第2項、第96条の3第1項)
職業安定法  ア)労働者供給事業の禁止(第44条)
 イ)暴行等による職業紹介の禁止(第63条第1項、第65条第9号)
労働安全衛生法  ア)危険・健康障害の防止(第98条第1項)
労働者派遣法  ア)建設労働者の派遣の禁止(第4条第1項)

イ)  特定建設業者の下請負人に対する違反是正の求め
 下請負人がその規定に違反している場合には、特定建設業者はその下請負人に対して、違反している事実を指摘して、それを是正するよう求めるべきことを義務づけています。
ウ)  特定建設業者の行政庁への通報
 さらに、特定建設業者が違反是正を求めたにもかかわらず下請負人が依然として違反を是正しない場合は、次の区分により行政庁に対し、速やかに通報することを義務づけています。

通報することとなる行政庁
下請負人(建設業を営む者)の区分 通報する行政庁
建設業者(許可業者) 大臣許可  国土交通大臣(許可をした地方整備局等)
 又は、建設工事が行われている区域を管轄する都道府県知事
知事許可  許可をした都道府県知事
 又は、建設工事が行われている区域を管轄する都道府県知事
その他(許可を受けていない業者)  建設工事が行われている区域を管轄する都道府県知事

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