斉藤 由美 さん

このページでは、ずっと大館に住まわれているかた、大館に戻って来られたかた、新しく大館に来られたかたなど、いろいろな“おおだて暮らし”をしているかたを紹介します。
管理人である地域おこし協力隊と様々なみなさんとのお話を紹介することで、少しでも大館を身近に感じてもらえればと思います。

第五回目は、大館出身で東京でご活躍された後、大館にUターンされた女性の紹介です!
英国紅茶研究家の斉藤由美さんにお話を伺いました!
ちなみに今回はお話を伺う前に実際に斉藤さんの紅茶教室に参加してきましたよ~(*^_^*)

写真:斉藤 由美さん

■簡単なご紹介
 お名前:斉藤 由美(さいとう ゆみ)さん
 出身地:大館市
 お仕事:英国紅茶研究家/ライター

ー斉藤さん、今日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします。

ーではさっそくですが、大館に戻って来られたきっかけを教えてください。

きっかけは結婚ですが、大館に戻ってくることを考えるようになったのは同級生の影響が大きかったと思います。
2011年に以前の職場を休職して「次のステップに進むためにこれまで出来なかったことをやろう」という時間を約1年つくりました。
自分自身で自由に内容を組み立てられる紅茶教室であったり、食についての勉強など、就職してから興味を持った様々なことに自由に挑戦する時間を作ろうと思ったのです。
同じタイミングでちょうど母校の鳳鳴高校が初めて甲子園に行くということが決まりまして、これはもう甲子園に応援に行かなくてはと思いました。

写真:スリランカで紅茶のテイスティングをしている様子

会社員時代、スリランカに出張したときのもの(2004年)。
リプトンオフィスで現地の同僚たちと紅茶のテイスティングを行なった。

ー甲子園、いいですね!!

応援に行った甲子園で、同級生達と再会しました。
試合の後、みんなで一緒に食事をすることになりました。
みんなでいろんな話をしたのですが、友人達が「大館をこうしたい、ああしたい」と熱く語るんですよ。
ふるさとのことをそんなに強く思い考える友人たちの言葉を聞いて、それまでぼんやりとしかとらえていなかった自分のふるさとが、突然輪郭を持って浮かびあがってきたような、そんな不思議な気持ちになりました。
ちょうど同じ時期にSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)で同級生達と繋がったことによって、大館の人たちとのつながりが広がりました。
私がはじめたのはFacebookでしたが、大館の人たちとつながったことにより、地元のお祭りや秋田犬、運動会から長木川のことまで色々な写真やリアルタイムの大館情報をコンピュータの画面で見ることができるようになりました。
高校を卒業して大館を離れたとき大館に未練はなかったし、大館に帰るというリアリティが全くなく過ごしていたのが、それを見ていたら、キラキラと音を立てているように感じたのです。
「もしかしたら、大館に帰ってきてもう一度住むという選択肢がこれからの人生の中にあってもいいのかな」という思いが、今思うと心の奥底のほうで、少しずつ広がっていきました。

ーひとつ大きなきっかけというよりは、徐々に「戻ってきてもいい」という気持ちが強くなっていったんですね。

そうですね。
きっとそのときはまだ、東京での生活でやり遂げていないことがあったような気がして、大館に転居するということはまったく具体的にイメージはできていませんでした。
その後一度東京で出版社に再就職をしました。
それまではずっと食に携わる仕事をしていましたが、一度本を作る仕事に携わってみたいという思いがずっとあったので、よい機会だと思い挑戦しました。
このような環境の変化の中で、以前より頻繁に大館に帰省するようになり、あるときの帰省で知人を通じて現在の主人と出会ったのです。
あのとき、甲子園での同級生との再会がなければ、大館に住んでいる人と結婚することはもしかしたら考えることもなかったかもしれませんし、大館に帰ってくるという選択肢も持たなかったような気がします。
自然に、ふるさと大館のなつかしい風景や出来事が、私のこれからの人生に必要な要素となっていったのだと振り返ります。
本当に色々な要因が重なって、それらが繋がって、今大館にいるという感じですね。

ーなるほど。その時に鳳鳴高校野球部が甲子園に行っていなかったら今ここにいるかどうかは?

分からないですね。「人生ってドラマティックだな〜」と思いました。

ー本当にドラマみたいですね(笑)
さて、結婚を機に大館にお越しになったということでしたが、何か大館でやってみたいことなどは決めていたのでしょうか?

ひとつだけ決めていたのは、「自宅で紅茶教室をしたい」ということです。
東京でも紅茶教室を開催していましたが、スペースの問題などもありなかなか自宅ではできなかったので、レンタルスペースを借りて行なっていました。
レンタルスペースでの開催となると、自分の好きな食器を使えなかったり、荷物を運ぶのがたいへんだったりと、自由にならないことがかなり多かったのです。
私が紅茶業界に入ってから様々な国で買ったり、人から頂いたりした思い入れのある食器を皆さんに使ってもらいたかったですし、自宅ならそれができると思い、家族に頼んでそのスペースを用意しました。
何より私自身が経験した「紅茶を知ると暮らしってこんなに楽しくなる」という経験を皆さんにしていただきたかったのです。
ですから、紅茶に関する仕事を自分なりのやり方で行なうことは、大館に転居してからも私の人生にはとても重要なことでした。

写真:紅茶レッスン

紅茶レッスンで使用している自宅の一室素敵なティーカップが並ぶ。

ー確かに先ほどの紅茶教室でも、とても素敵なティーカップを使わせていただきました!
和菓子と紅茶という新しい発見もあり本当に楽しかったです(^^)

ありがとうございます。
ただ、紅茶教室を始める前にまずは「専業主婦の暮らし」に慣れることが、私にとっては大事なことでした。
何をやるにしても、家族に迷惑をかけず、きちんと自分で管理ができるようになるまでは他のことはやっていけない、と自分の中で決めていたのです。
掃除や洗濯など、暮らしのルーティーンを作ることに最初はものすごく時間がかかりましたが、その中でも大変だったのが毎朝5時に起きて主人のお弁当を作ることでした。
東京での仕事は、朝それほど早くはなかったので、毎日8時ごろまで寝ていましたから、大館に転居する約3ヶ月前からは、まず朝5時に起きるトレーニングを始めました(笑)
本当に暗くなるほどネックでなかなか自信が持てませんでしたが、ここを乗り越えないとその先に進めないのだと言い聞かせ、そこだけはとにかく一生懸命やりました。
そのときに、昔スリランカ人のティーブレンダーに「朝型人間になったほうがいいよ」と言われたことを思い出したりもして。
製茶工場など、紅茶業界はものすごく朝が早いので、紅茶業界で仕事をする人は朝型人間のほうが仕事がスムーズなのだそうです。
早朝のキッチンでお弁当を作りながら、ふとそのスリランカ人の言葉を思い出し、大館の生活が私を朝型人間に変えてくれたのだと、やっと一人前の紅茶業界人になれた気がしました。

ー朝型人間、私はちょっとなれそうにないです(笑)
それにしても、様々な経験が今につながっているものなんですね~。

そうですね。過去にやってきた経験というのが新しいチャレンジに密接につながっているものだと、大館での暮らしを通じて知ることが出来ましたね。
すごく嫌で無理だと思い込んでいたことにチャレンジでき、克服できたのは、主人のおかげだと思っています。

ー主婦に紅茶教室に、とてもお忙しい日々を過ごされていると思いますが、どういうところでリフレッシュをされているんですか?

まずひとつは歩くことです。
歩いて買い物に行ったりするのが一番のリフレッシュですね。
前々から思っていたのですが、大館ってどこのお宅の庭も素晴らしいんですよ。
大小の規模に関係なく、本当に心を込めたお庭が多くて、ガーデニング王国のイギリスにそんなムードがとてもよく似ていて、そんな素敵なお庭を見ながら歩くのが好きです。
こういうところに、暮らしの真心や丁寧さを感じ、「大館っていいな」と再認識するひとときでもあります。
もうひとつは大館の地物の野菜を使って、家族が喜ぶような料理を作ることです。
大館の野菜がこんなに美味しいとは思わなかった。
すべて地物で夕食を作ることに挑戦するなど、食生活がすごく楽しくなりました。

写真:地元の行事に参加している様子

2015年アメッコ市の丸髷行列での一コマ。地元の行事にも積極的に参加している。

ー本当に、大館は美味しいものが多くて太ります(笑)
それでは最後に、移住を考えている方々に向けて「大館ならこんな生活、暮らしができるよ」ということがありましたら一言お願いします。

季節折々の自分の暮らし方を、人に話したくなるような暮らしができると思います。
東京に暮らしていた頃って、季節が変わったなと気付くのはをテレビなどで季節のニュースを見たときでした。
でもここ大館では、町を歩いて咲く草花や、風の匂い、スーパーの野菜を見たりしたときに「もうこんな季節」と感じることができます。
生活に身近なところで、質の高い、地元に密着したネタで情報交換ができますし、またそれを人に伝えたくなってしまうという、心地よい情報の循環があるようにも思います。
それは、お米や野菜、果物など、たくさんの豊かなものに囲まれている大館ならではのことではないかなと思っています。

身近なところにこんなに幸せが溢れているというのは、じつは紅茶とすごく繋がる部分があります。
紅茶を飲みながら話をすると、どんな話でもそこに絶対に笑顔が溢れてくる。
私が紅茶の仕事をずっと続けているのは、私自身が紅茶を通して「幸せってこんなに身近なところにある」ということを知ったからなのです。
それを多くの方に伝えたいと思っているのですが、逆に大館の暮らしから私がそれを教わっている、そんな毎日を過ごしています。

ー本当に、たくさん素敵なお話を聞けました。
斉藤さん、お忙しいところどうもありがとうございました!!
次回もいろいろな方々にお話を伺っていこうと思います!

そのほか紅茶教室など、斉藤由美さんが発信する素敵な情報についてはFacebookでもご覧いただけます。

イギリス時間、紅茶時間

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