平成28年度までの取り組み

 大館市は、出羽山地を縫って流れる米代川と長木川の清流沿いに開けた大館盆地に位置し、秋田、青森、岩手の北東北三県をつなぐ交通の要衝の地です。

 明治22年に町制を施行し、鉱石と秋田杉の美林に恵まれ、県北部の政治、経済、文化の中心都市として、発展しました。
 昭和26年に釈迦内村と合併後、昭和30年と昭和42年に近隣町村を編入し、平成17年6月20日には、比内町、田代町を編入し、現在の市域(913.22k㎡)、人口約7万6千人を形成するに至りました。
 近年は、大館能代空港や日本海沿岸東北自動車道などの高速交通体系の整備が進み、さらに企業の進出や設備投資による新たな雇用や経済波及効果の持続を図っています。

 一方で、過去を振り返ると、昭和26年に市制施行以来、4度の大火に見舞われ、数多くの歴史的建造物や資料を失いました。そのため、歴史的な街なみや国指定の重要文化財が少ないものの、「八幡神社」をはじめ地域には貴重な資源や人々の営みが数多く存在しています。

 こうした地域資源や伝統行事の伝承保存が困難な中で、未来へ紡ぐことが重要で、地域が持つ「歴史」・「文化」・「伝統」に光を当て、市民一人ひとりが、ふる里大館に誇りと自信を持って暮らしていただけるようこの取り組みに着手しました。
 「歴史的風致維持向上計画」の認定を目指し、あわせて周辺都市との連携・交流を促進し、広域観光の拠点づくりに取り組んでいきます。
 

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歴史まちづくり法とは

 正式名称:地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律

 我が国のまちには、城や神社、仏閣などの歴史的価値の高い建造物が、またその周辺には町家や武家屋敷などの歴史的な建造物が残されており、そこで工芸品の製造・販売や祭礼行事など、歴史や伝統を反映した人々の生活が営まれることにより、それぞれの地域固有の風情、情緒、たたずまいを醸し出しています。
 しかしながら、維持管理に多くの費用と手間がかかること、高齢化や人口減少による担い手が不足していることにより、歴史的価値の高い建造物や歴史や伝統を反映した人々の生活が失われつつあります。
 「歴史まちづくり法」は、このような市街地の環境(歴史的風致)を維持・向上させ、後世に継承するために、平成20年11月4日に施行されました。

 

歴史的風致とは

 地域における固有の歴史および伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物およびその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境(歴史まちづくり法第1条より)

 具体的には、歴史上価値の高い建造物及び周辺市街地と、人々の生活が一体となった活動が50年以上継続している営みを「歴史的風致」と位置付け、これを維持・向上することにより、個性豊かな地域社会の実現や都市の健全な発展と文化の向上に寄与することを目的としています。
 当市の特徴を生かし、物語を紡ぎ、どのように広域連携をして、観光振興へ生かすかがポイントになります。

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風致維持向上計画とは

 平成20年に施行された「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(通称:歴史まちづくり法)」に基づき、市町村が作成する計画です。
 この計画が国に認定されると、重点区域において、法律上の特例措置や各種事業について、これまで以上の支援が受けられるようになります。重点区域には、国指定の重要文化財などが含まれることが条件になっています。 

 

歴史と伝統を反映した営み

 歴史・文化・伝統を次世代へ継承する取り組みをし、人口減少社会を見据えた本市の羅針盤になり、ふるさと大館に誇と自信を持てるまちづくりを目指します。

①大館ばやしの音色が響く大館城下の営み

 江戸時代の町割りにより配置された寺社が戦火を乗り越えて、現在も同じ場所にあり、城下町の面影を残しています。
 また、お盆を過ぎる頃になると、周辺では400年以上続くと言われる大館ばやしを練習する音が聞こえてきます。

②鳳凰山大文字に見る営み

 3画の総延長が450mにも及ぶ巨大な大文字は、四季折々の表情を見せ、独特の風致を形成しています。
 8月16日には先祖の供養と市の発展を祈願する大文字焼きと祭りが行われます。

③浅利氏の史跡が残る比内の営み

 大日神社は「ダンブリ長者物語」発祥の地とされ、鹿角市小豆沢、長牛と3社の大日堂としてあがめられています。
 また、甲斐の国から移ってきた浅利則頼が築城した十狐城跡があり、築城の際に踊ったとされる「独鈷ばやし」は、今も地域で受け継がれています。

④矢立峠に続く羽州街道沿いに残る営み

 秋田と青森の県境に位置する矢立峠には、天然秋田杉が風景林として残され、文化庁の「歴史の道百選」に選ばれています。
 近くには、長走風穴館があり、天然の冷蔵庫として活用した倉庫跡で、真夏でも吹き出る冷気を体感できます。

⑤長木川渓谷沿いの小坂鉄道軌道跡の営み

 明治39年に開設、平成21年に廃止された小坂鉄道の軌道などが残されていて、平成26年に市に寄贈されました。
 沿線には、長木川渓谷温泉があり、軌道を利用したレールバイクは観光資源として定着しています。

⑥十二所城下に残る営み

 十二所城は、江戸幕府の一国一城令により、1620年に破却されました。かつて城下町を形成した屋敷割の痕跡や藩士子弟の教育を担った成章書院跡、城代を務めた茂木家の墓が残っていて、地域の住民によって守られています。

⑦田代岳(田代山神社)の作占いに見る営み

 田代岳山頂付近にある湿原には、神聖視される地塘があり、毎年半夏生の日には、作占いが行われています。
 参拝者は、笹とツゲを持ち帰り、田の水口に立てて虫除けにするという慣わしが、今も続いています。

⑧大館曲げわっぱ伝統工芸職人たちにみる営み

 江戸時代末期から続く「大館曲げわっぱ」の技法は、現在の職人に受け継がれ、独自のデザインを開発し、美しい仕上がりの伝統工芸品を生み出し続けています。
 市内の遺跡から、1100年以上前の曲げ物の器が発見されており、その起源は大変古いものです。

⑨扇田神明社祭典に見る営み

 扇田神明社は、戊辰戦争の際に焼失し、明治7年に現在の社殿が再建されました。
 佐竹侯秋田入部の際に常陸国から移したとされる神輿を拝領に行ったのが白丁の人々で、その子孫は現在も祭典で重要な役目を受け継いでいます。

⑩奥州藤原氏終焉の地に見る営み

 源頼朝に追われ、贄の柵で果てた藤原泰衡の遺体を埋葬した場所が、後に錦神社となりました。
 八木橋の五輪台には、泰衡を追い自害した奥方の話が伝わり、西木戸神社として、祭られています。

 

計画作成の進め方

 平成27年11、12月に地区座談会を開催し、市民の皆さんからご意見をお伺いしました。また、関係者から専門的な見地で意見をいただき素案を作成しています。
 平成28年2月には、学識経験者の方々を中心とした「大館市歴史的風致維持向上協議会を開催しました。計画の本質や実効性などに助言をいただきながら、庁内で組織する策定部会で内容の精査・検証を重ねて、計画を策定します。
 策定した計画は、平成28年度末に国へ認定申請する予定です。

計画認定後の事業

 この計画では、歴史的な建造物の保存・修復や歴史的風致を損ねている建造物を修景等の手法によって、積極的に市街地の環境を「向上」させることを目指しています。
 具体的な内容は、今後市民の皆様の意見を集約し、関係機関と協議していきます。計画の熟度を高め、重点地区を設定し、桂城公園を核とする城址公園周辺の整備事業や歴史的風致の継承支援策を検討します。

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桂城公園(春).jpg

関係資料

 歴史まちづくり概要.pdf

 城址平成地図.pdf

 大館市の文化財.pdf

 

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